「なにをやってるんだ、ポッター!」
不意をつかれたハリーとリドルが二人揃って立ち直れずにいるところへ、透明マントを脱いで
現れたのは、なんとドラコ・マルフォイだった。マルフォイは転がっていくグリフィンドールの剣に
飛びついた。
「クルーシオ!」
「プロテゴ! 護れ!」
先ほどまでとは打って変わって、怒りをで髪を振り乱したリドルがマルフォイに向かって呪文
を発射したが、ハリーは盾の呪文で応戦した。マルフォイに突き飛ばされたおかげで、恐ろしく
甘美で危険な術中から完全に抜け出すことができた。
「この子に僕の体を新しく産んでもらうのも悪くないと思ったんだけど、どうやらきみはそんな気
分じゃないみたいだね。しばらくこの体で我慢するしかないようだ」
「当たり前だ」ハリーは吐き捨てた。
「マルフォイやハーマイオニーを襲ったのも、ウィンキーからハッフルパフのカップを奪ったのも
全部お前の仕業だったんだな!」
「もちろんさ。何を間違えたかきみたちは、この間抜けな兄を犯人だと決め付けていたようだっ
たけどね。おかげでカップを見つけることができた。ずっと探していたんだ、僕の魂の欠片を」
「それをお前が持っていたところで何の役に立つというんだ! また新しく、別の肉体を必要と
する魂が増えるだけじゃないか」
「言ったろう、僕には僕の計画があるって」
リドルは目を光らせて、ハリーとマルフォイを見比べた。片方は杖を、片方はグリフィンドール
の剣を隙なく構えている。リドルの視線が階下へ通じる階段の方へ走った。下のほうから足音
が聞こえてくる。騒ぎを聞きつけた人々がやっと駆けつけてくれたのだ。
「もう一度だけチャンスをあげるよ、ハリー。僕と二人なら世界を変えることができる。きみには
そいつを殺して剣を奪い、僕と一緒に来るという選択肢も残されている」
リドルが手を差し伸べた。
「僕にはその剣を持つ資格がある。校長室にあることは分かっていたけど、守りが堅くて手に
入れられずにいたんだ。きみが剣を携えて僕と来てくれるのなら、きみの望むものは何でもあ
げるよ。大好きなこの娘だってね」
「エクスペリアームズ!」
ハリーは腕をしならせ、リドルに向かって赤い光線を放った。ハリーが一度は愛し、口付けた
愛しい女性の身体へ。しかしハリーが放った呪文はリドルが作った盾の呪文によって、彼女へ
届く前に力尽きた。
「それが答えか」
リドルがありったけの憎しみを込めて呟いた。屋上へ出るドアから、マクゴナガル先生とフリト
ウィック先生、それにスプラウト先生が一連なりになって現れた。ハリーはほっとして、構えてい
た杖を僅かに降ろしかけた。
トム・リドルが杖を振ったかと思うと、屋上全体に突風が吹き荒れた。あまりに激しい勢いに、
ハリーは膝をつき、マルフォイと折り重なるようにして床に伏した。口の中に砂利が入り込み、
轟々と唸る風の中で、ハリーは目と口を塞いでじっとするほかなかった。
ようやく少し風がおさまり、ハリーが眼鏡を抑えながらゆっくりと目を開くと、そこにはすでにリ
ドルの姿はなかった。
空を見上げると白い月を背景に、箒に跨り空を横切っていく小さな影が見えた。追いかけて
ももう無駄だ、とハリーは悟った。彼女は箒に乗るのがとても上手だった。いつだってすばしっ
こく、ハリーの次に有能なシーカーだった。

|