「ハリー・・・・・・あなた、腕時計なんてしてた?」
 ハーマイオニーが訝しげに訊ねた。さすがに彼女は鋭い。
「あー・・・・・・もらったんだ。」
 これに関して隠すつもりはない。もともとドラコとのことだって、正面切って聞かれていないか
らなにも伝えていないだけで、本当ならば自慢したいくらいのところだ。
「どうしたんだよ、二人とも。早くしろよ。」
 歩みの遅い二人を振り返り、ロンが叫んだ。
 足元はまだ明るかったが、昼間三人で歩いていたときとは打って変わって、辺りには既に夕
暮れの空気が迫りつつあった。
 いよいよ決勝戦が始まるということで、会場付近には屋台が立ち並び、見ているだけで心が
浮き立つような光景だったが、ハリーはそれよりも先ほどの思いがけない逢瀬のほうがよほど
衝撃的だった。

 ドラコがあんなに可愛いなんて・・・・・・・・・!

 分かっちゃいたが惚れ直し、と言うヤツだ。
 記憶に浸りかけたハリーを、ハーマイオニーが変な顔をして見ているのに気づいて、そっと付
け加えた。
「僕のファンから。バースデープレゼントだって。」
 先をいくロンに聞こえないくらいの呟きだったが、ハーマイオニーにはちゃんと聞こえたよう
だ。嘘ではない。でも、自分の顔はたぶん赤くなっている、とハリーは思った。沈み始めた太陽
の照り返し、でごまかされているだろうか。
 それでもつい、笑みが零れてしまって。
「それはまた、ずいぶん大胆なことをするわね。」
 ぼそり、とハーマイオニーが答えた。彼女は結局あのあと、暑い中、ロンと一対一でとことん
付き合わされてしまったようで、あまり機嫌がよろしくない。
「うん・・・・・・確かに―――」
 とたんにさっきの、いつもよりかなり積極的だったドラコの様子が、ありありとフィードバックし
てきて、今度こそハリーはフォローのしようがないほど真っ赤になった。
「あなたもそう思う?プレゼントに腕時計、なんて―――」
「ハーマイオニー!早く!」
 
ロンがまた何か、彼女に見せたいものを見つけたらしい。ハーマイオニーはため息をつきなが
らも、どちらかと言えば嬉しそうに前方へ足を速めようとしたが。
「ちょっと待って、ハーマイオニー。腕時計ってなにか問題なの?」
 せっかくだから、今年のクリスマスは意趣返しに、ゴールドと赤、できればライオンのオブジェ
でも付いた腕時計を贈って、お揃いにしようかな、なんて計画を立てつつあったハリーは、慌て
てハーマイオニーを呼び止めた。
「ええ?知ってたんじゃないの?腕時計を贈るっていうのは」


 ポーン、と遠くで花火が上がった。


「贈った相手を」



「ハーマイオニーってば!」







「束縛したいっていう深層意識の表われ・・・・・・」





「ハーマイオニー!」

「分かったわ!」



 ハーマイオニーが軽快にロンの元へ駆けていく。次から次へ色を変える魔法をかけられた花
冠に、ハーマイオニーが歓声を上げて、ロンが得意げな顔をしている。

 またひとつ、花火が上がった。
 けれどハリーの耳にはもはや届いていない。





 『Forever』





 文字盤の裏に彫られていた言葉を思い出す。
 ドラコに嵌められた位置では少しきつかったので、ハリーが緩めようとしたときに、彫りこまれ
 ていた文字気がついた。
 どういう意味?と訊ねたら、カードの代わりだ、と答えられた。
 ずっと、どうしたいのさ、と更に問い詰めても、ドラコはそれ以上教えてくれなかったが。



 『獲得しろ。』



 ドラコが欲しい。そう言ったハリーに、ドラコは言い切った。
 欲しかったらねだるのではなく獲得してみせろ、と。
 簡単に手に入るものでは、ハリーは決して満足しないだろうから。
 そしてドラコは―――永遠にハリーを、束縛していたい・・・・・・?

 自分は簡単にはあげられない。でも相手は自分の手で繋いでおきたい。
 なんて我侭で、意地っ張りで、恥ずかしがり屋な恋人だろう。
 そんな彼が、心底、愛おしい。
 一刻も早く、素直にしてあげなくては。結局それが、幸せへの最短コースなのだから。




「ハリー、あなたも見て!これ凄く面白いわ!!」
 
 手を振るハーマイオニーに軽く頷いて、足を踏み出しながら、ハリーはそっと右手で文字盤の
表面を撫ぜた。





 素直になればいい。僕が欲しいというべきなのは君なんだ。
 そうすれば僕は君に捕らわれていてあげるから。




 ずっと、ずっと。








 いっそう濃くなった夕闇の中を、歓声がいくつも突き抜ける。
 円が僅かに欠けた月が、熱狂する草地を涼やかに照らしていた。









ハリーを幸せな気持ちにしてあげたい〜〜と智恵を絞った結果がこれでした。がくり。
ちなみに占星術では、ドラコは(恋愛関係に)執着欲最下位の双子座、英雄は独占欲の塊・獅子座です。
そんな設定を生かしきれていない、ドラコの隠れた束縛願望なお話。
ハリー、お誕生日おめでとう!!