最も重大な秘密 The Most Important Secret









 太いゴム管の中に押し込められる感覚が、パッと消えうせたかと思うと、ハリーは自分がホグ
ワーツの校門の前に立っていることに気が付いた。周囲に明かりは全くなく、夜空の星だけが
頼りだったが、足元に白い雪が降り積もっているおかげで、かろうじて辺りを見回すことができ
た。
 ハリーの横で、ロンとハーマイオニーが荒い息をついていた。ハーマイオニーは髪の毛がい
つも以上にぐしゃぐしゃになっていた。
「『姿現わし』がこ、こんなに苦しいなんて思わなかったわ。距離が長いと難しくなるとは知って
いたけど……」
 ハリーは黙って、羽からつららを垂らしているイノシシの像を見上げていた。
「おい、僕の眉毛、ちゃんと付いてるか?」
 突然ロンが大声を上げたが、ハーマイオニーがそれを慌てて制した。
「眉毛は大丈夫だからあまり騒がないでちょうだい、ロン。今は真夜中なのよ。消灯時間をとっ
くに過ぎているはずだもの、私たち普通なら罰則ものだわ」
「どうやって入ろう?」
 二人の言い合いを遮って、ハリーは二人に尋ねた。校門は固く閉ざされていて、簡単な呪文
くらいではとても開けられないだろうと分かっていた。
「大丈夫よ。ほら、見て」
 ハーマイオニーの指差す方を見ると、暗い校庭の向こう側から、オレンジ色の小さな光が、
校門の方へと近付いてきていた。
「私、姿現わしをする前に守護霊を使ってマクゴナガル先生にメッセージを送ったの」
 やがて暗闇の中に、杖先にオレンジの光を灯したマクゴナガル先生の姿がはっきりと浮かび
上がってきた。タータンチェックのナイトキャップをかぶったままのマクゴナガル先生は、姿現わ
しした直後のハーマイオニーに負けず劣らず青ざめていたが、すぐに校門の鍵を開け、三人を
ホグワーツの敷地内へ入れてくれた。
「一体全体、何が起こったというのです、ミス・グレンジャー」
 入念に鍵のチェックをしてから、マクゴナガル先生は杖灯りをかかげてハリーたちを校舎の
方へ導いていった。
「私たちは、あなた方が今学期はもう学校に戻ってこないものだとばかり考えていました」
「そのつもりでした」
 どうやって答えたらいいか迷っているハーマイオニーの代わりに、ハリーが急いで口を挟ん
だ。
「だけど僕らは急いでホグワーツに帰ってこなくてはいけない理由を見つけたんです。先生、時
は一刻を争います」
 マクゴナガル先生はぴたりと足を止めると、低い鼻眼鏡をぐいと押し上げて、ハリーを見つめ
た。
「それは、あなたが先学期末にダンブルドアと学校を離れたことに関係がある問題なのです
か」
 ハリーは迷わず頷いた。いままで黙ってきたが、もうマクゴナガル先生にも話すしかないだろ
うと決めていた。
「そうです、先生。そのことで先生にお話したいことがあります。ただ、誰にも聞かれたくはあり
ません」
 マクゴナガル先生は何度かゆっくりと目を瞬かせると、再び校舎へ向かって歩き出した。
 石段を上って樫の正面扉をくぐり、ハリーたちは懐かしい玄関ホールへ足を踏み入れた。ホ
ールの片隅に、大きな四つの砂時計がきちんと置かれていた。ダンブルドアが殺された夜、あ
のグリフィンドールの砂時計が破壊され、中のルビーが血痕の飛んだ床の上を転がっていった
ことを、ハリーは思い出した。
 マクゴナガル先生はそのままホールを横切り、階段の方へ進んでいった。ハーマイオニーと
ロンに目配せすると、ロンはごくりとつばを飲み込んだ。
「先生、ロンとハーマイオニーにはここで待っていてもらっていようと思うんですが」
 もう階段を上がりかけていたマクゴナガル先生は、訝しげな表情で三人を振り返った。ハーマ
イオニーが助け舟を出した。
「実は私たち、夕食もまだだったんです。もうおなかがペコペコで……厨房へ行って、何かいた
だいても構わないでしょうか?」
 横でロンが何度も首を縦に振るので、マクゴナガル先生もついに許可を出した。二人が足早
に地下へ去っていくのを見送り、ハリーはマクゴナガル先生に連れられ、ガーゴイルが見張り
を務める校長室の前まで来た。

「『アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア』」

 マクゴナガル先生が素っ気無く合言葉を告げると、ガーゴイルはぴょんと飛びのいて、動く螺
旋階段への道を空けた。
 円形の校長室は、ハリーが最後に入ったときとほとんど変わりなかった。銀の小道具類があ
ちこちに置かれ、肖像画の中のダンブルドアは相変わらず眠っている。組分け帽子も憂いの
篩も、ガラスケースに収められたグリフィンドールの剣も、全てが元々あった場所に収まってい
たが、ただ一つ、フォークスの止まり木だけが空っぽで、寂しそうに見えた。
「この部屋には私もほとんど入っておりません。ダンブルドアの死後、教員たち全員が互いに
守人となり、ホグワーツの教員以外は立ち入れないようにしてきました」
 マクゴナガル先生は杖を振って、椅子を二つ出した。そして片方をハリーに勧めながら、ダン
ブルドアが使っていたふわふわの椅子を避け、背筋をぴっと伸ばして、固い木の椅子に自分も
腰掛けた。
「もちろん他の先生方や生徒たちもです。ここならば誰かに話を聞かれる心配はないでしょう。
ポッター、お話しなさい」
 ハリーは大きく息を吸うと、これまでのことをなるべく順序立てられるように努力しながら話し
だした。
 去年の六月にダンブルドアと出かけた洞窟での出来事、魂を引き裂く分霊箱の秘密――た
ぶん言わない方がいいだろうと思ったので、ヴォルデモートに分霊箱の秘密を教えたのがスラ
グホーンだったことは黙っていたが――ゴドリックの谷で見つけた、R.A.B..が誰なのか示
すヒント、そしてグリモールドプレイス十二番地に残されていた本物のロケット。
 長い話だったが、マクゴナガル先生は身じろぎ一つせず、ハリーの言葉に聞き入っていた。
壁にかかった歴代の校長たちも、ダンブルドア以外は全員、いまや狸寝入りすらせずに額縁
から身を乗り出している。
「信じられません」
 首を振りながら、マクゴナガル先生は囁くように言った。
「私にはとても――私たちが騎士団の拠点として使ってきたあの家に、例の…あの人の魂が
ずっと隠されていただなんて、とても……それにダンブルドアが気づかなかっただなんて」
「ロケットは壊れかけていたんです」
 ハリーは自分のローブの上から、ポケットの中のロケットを押さえて言った。
「ロケットは一度、シリウスの弟のR.A.B.――レギュラス・アクトゥルス・ブラックが破壊しよう
としましたが、完全には壊せていませんでした。だけどロケットの持つ力は大分弱まっていまし
た。だから僕達だけでもどうにか破壊することができました」
 マクゴナガル先生はため息をつくと、明らかに賞賛の目をハリーに向けた。
「ポッター、あなたの実力は大したものです。仮にミス・グレンジャーとミスター・ウィーズリーの
協力があったにしても。それで、あなたは先ほど、あなた方がホグワーツに戻ってきたのはさっ
きから言っている…」
 分霊箱という言葉を使うのを、少なくともマクゴナガル先生は、ヴォルデモートの名前と同じく
らい恐れているらしかった。ハリーは頷いて後を引き取った。
「そうです。分霊箱の一つがホグワーツにあると、僕たちは考えたんです」
 マクゴナガル先生は口を開けたが、声は一つも出なかった。代わりに天井近くにかけられた
肖像画の一つがしゃっくりのような音を立てた。
「それは元々ホグワーツにあったわけではなかったと思います。だけどダンブルドアも知らない
うちに、分霊箱がホグワーツに持ち込まれていたんです」
「有り得ません、ポッター、ダンブルドアの目を誤魔化すなど、通常の魔法使いにできることで
はありません」
 マクゴナガル先生が喘ぎながら、やっとのことでハリーに言った。
「魔法使いではありませんでした」
 肖像画の中の校長の一人が、ハリーの言葉を一言も聞き逃すまいと巨大なトランペット型の
補聴器を取り出した。
「魔法使いにはダンブルドアの裏をかくことなどできません。だけど…」
 その時だった。下で激しくドアを叩く音がして、ハリーは話を中断するはめになった。
「今度は一体――?」
 マクゴナガル先生が立ち上がるよりも早く、ハリーは動く螺旋階段を駆け下りていた。ガーゴ
イルが守るドアを勢いよく開け放つと、慌てた様子のロンとハーマイオニーが廊下に立ってい
た。
「ああ、ハリー聞いて、遅かったの!」
 ハーマイニーの叫び声が、誰もいない廊下にワーンと響いた。
「なんだって、それじゃ…」
「だめだったんだよ。どこを探してもいなかった。ドビーの話じゃ昨日まではいたらしいのに」
 ショックで倒れそうになっているハーマイオニーを支えながら、ロンが言った。
「どうしたというのです、あなた方――」
 やっと追いついてきたマクゴナガル先生に、ハリーは暗い表情で答えるしかなかった。
「僕たちが探していた、分霊箱のヒントが、なくなってしまったんです」
 一歩出遅れた悔しさに、ハリーは唇を咬んだ。
「屋敷しもべ妖精です。分霊箱をホグワーツに持ち込んだのは。彼らには魔法使いにはない不
思議な力があります。だから普通の魔法使いなら触れることも危険な分霊箱を、彼らにしかで
きないやり方で安全に運ぶことができた」
 マクゴナガル先生は息をのんだ。
「誰なのです、その…屋敷しもべ妖精は」
「ウィンキーです」
 ハーマイオニーが震えた声で答えた。
「あの、クラウチさんに使えていた屋敷しもべ妖精……あの子が分霊箱をホグワーツに持ち込
んでいたんです」
「ヴォルデモートは十六年前、ゴドリックの谷を襲うまでに作っていた五つの分霊箱の内、指輪
とスリザリンのロケットを、それぞれ自分に縁がある場所に隠しました」ハリーは左右に目を走
らせ、廊下に自分たち以外誰もいないのを確認した。
「だけどトム・リドルの日記帳についてはどこかへ隠すのではなく、死喰人の一人に預けていま
した。ヴォルデモートは自分以外の誰も信用しませんが、少なくとも死喰人の忠誠心は過信し
ていたのです。ということは、日記帳以外のホークラックスも、同じことが言えるのではないでし
ょうか」
「あなたが言いたいのは――」マクゴナガル先生は自分を落ち着かせるために、胸を手のひら
で叩く動作をした。
「あの人は残りの…分霊箱を死喰人の誰かに預けた可能性があるということですか。確かに
有り得ない話ではありませんが…」
「ヴォルデモートはいずれ、それぞれの分霊箱を十分に安全に隠して置ける場所を探し出すま
でのつもりで、死喰人たちに分霊箱を預けていたんだと思います。万が一、全ての分霊箱を隠
し終わる前に、自分が致命傷を負うようなことがあった場合に備えて、ひとまず分霊箱は分散
させておくに越したことはないと考えた。だけどあいつは分霊箱を全部隠しきる前に、赤ん坊だ
った僕を殺しにやってきて…」
「そのまま消えてしまった」
マクゴナガル先生は何度も深く頷いた。
「R.A.B.はヴォルデモートが死喰人に預けた分霊箱が『何』かまでは突き止められなかった
けれど、『誰』に預けたかを探りあてていました。それが、死喰人の中でも、とりわけ熱狂的に
ご主人様に従っていた、バーティミウス・クラウチとベラトリックス・レストレンジです。そう、ベラト
リックスなんです」
 ピクリと僅かに眉を動かしたマクゴナガル先生に遮られる前に、ハリーは急いで続けた。
「最初にヴォルデモートから日記帳を預かったのはベラトリックスだったんです。だけどベラトリ
ックスはヴォルデモートが消えてから間もなく、アズカバンへ送られることになった。そこでベラ
トリックスは、ルシウス・マルフォイにご主人様から預かった大切な日記帳を保管させることにし
たんだと思います。これは僕らの推理でしかありませんが」
 マクゴナガル先生はまだ何か言いたげな様子だったが、どうやら反論する余地は見当たらな
かったらしい。
「バーティミウス・クラウチ・ジュニアも、ベラトリックスと一緒にアズカバンに送られました。アズ
カバンへ闇の魔術に染まった道具を持ち込むことなどできるはずもありませんから、クラウチ・
ジュニアもベラトリックスと同じように、誰かに分霊箱を預けた可能性が高いと思います」
 ハーマイオニーは、授業中みんなの前で特別に難しい呪文の説明をさせられる時のように、
はきはきした話し方をした。
「クラウチ・ジュニアの場合、ベラトリックスのように身内に死喰人がいたわけではありませんで
した。それどころか、死喰人たちでさえ、彼が仲間だということを知らない者が多かった。魔法
省に捕えられたクラウチ・ジュニアがとっさに分霊箱を預けられる相手がいたとすれば、それは
ウィンキーではないでしょうか。しもべ妖精は主人に対して絶対的に服従します。それにご主人
様の命令に従うためならば、自分が持っている優れた能力を惜しみなく使うこともできる。しか
も通常、魔法使いたちはしもべ妖精に注意を払わない――ヴォ、ヴォルデモートの重大な秘密
を、小さなしもべ妖精が隠しているだなんて、誰が疑ったりするでしょう?」
 恐怖に顔を引きつらせながら、ハーマイオニーはやっとヴォルデモートの名前を言うことがで
きた。
「ウィンキーは以前、厨房で私に向かって、ウィンキーはご主人様の一番大切な秘密を預かっ
ている、確かにそう言いました。私はご主人様というのはクラウチさんのことだとばかり思って
いました。だけどあの時ウィンキーはクラウチさんから『洋服』をされて、ホグワーツにやってき
ていたんです。ウィンキーにとってのご主人様はすでにクラウチさんではなく、ムーディ先生に
化けていた息子の方だったと考えられます」
「そしてウィンキーが言った『ご主人様』をクラウチ・ジュニアとした場合、ウィンキーがクラウチ・
ジュニアから預けられていた大切な秘密とは――」
 ハーマイオニーの後を継いだハリーは言葉を切って、マクゴナガル先生の反応を伺った。
「つまり…ウィンキーがかねてから預けられていた分霊箱は、三年前ウィンキーと一緒にこのホ
グワーツへ持ち込まれ…今もまだホグワーツのどこかに――」
「僕たちはそれ以外考えられないと思いました。だから急いで戻ってきたのですが…」
「きっとウィンキーは誘拐されたに違いないわ! 死喰人の仲間に」
 ハーマイオニーは感情的に声を昂ぶらせたが、ロンがうんざりしたように首を振った。
「あの子が分霊箱を守っていると知った死喰人たちが、私たちがホグワーツに戻ってくると気づ
いて、慌ててウィンキーをさらっていったのよ」
「しっかりしろよ、ハーマイオニー。例のあの人にしろ死喰人にしろ、僕たちがグリモールドプレ
イスからホグワーツに姿現わしするだなんて、あらかじめ分かりっこないだろ。それにもし連中
が、元々ウィンキーが分霊箱を隠し持っていると知っていたなら、なんでもっと早くに手をださな
かった? 時間はいくらでもあったじゃないか。きっとウィンキーは僕たちが帰ってくるのを察し
て、ご主人様から預かったお宝ごと逃げ出したんだと思うな」
「僕もそう思う」
 ハリーは憂鬱げにロンに同意した。
「でも念のため、ウィンキーが分霊箱を隠しそうな場所を見て回る価値はあると思わないか? 
たとえば、必要の部屋とか。分霊箱は持ち去られていても、何か手がかりが残っているかもし
れない」
 ロンとハーマイオニーに提案するハリーを、マクゴナガル先生が慌てて止めた。
「いけませんよ、ポッター。今すぐその――分霊箱を探し出そうだなんて、絶対にいけません。
ええ、絶対です」
 三人が抗議しかけるのも構わず、マクゴナガル先生は厳しく命じた。
「とにかく消灯時刻を二時間も過ぎていることを思い出していただきたいものです、ミスター・ウ
ィーズリー。ミス・グレンジャー、あなたもです。分霊箱がとてつもなく危険で恐ろしく、また例の
あの人の一味が喉から手が出るほど欲しがっているものだということは、ポッターの話でよく分
かりました。明日の朝、私から他の先生方に事情を説明して、協力をお願いします。ですから
このホグワーツの中にあるかもしれない分霊箱を探し出そうなどという試みは、夜が明けてか
ら、教員立会いの下で行うように。この時間ではあなた方に万が一のことがあっても、助けに
行けるかどうか分かったものではありません」
 ハリーとしては今すぐにでも必要の部屋や調理場の床石を全てひっくり返しに行きたい気持
ちだったが、マクゴナガル先生の言い分ももっともだった。
「今はひとまず体を休めることです。寮へお行きなさい。七年生の寝室を使うように。あなた方
の荷物はグリモールドプレイスの屋敷にあるのですね? すぐに取りに行かせましょう」
 校長室の前からグリフィンドール塔の入り口まで三人を引率し、マクゴナガル先生は軽いい
びきをかいて寝ている太った婦人を無理矢理起こした。

「『ヒラヒラパピヨン』」

 マクゴナガル先生が間違いなく合言葉を言ったので、眠りを妨害されてご機嫌斜めの太った
婦人も、ドアを開けざるを得なかった。
 とっくに火の消えた談話室を通り抜け、ハーマイオニーが女子寮へ続く階段をのぼっていくの
を確認してから、ハリーとロンは自分たちの寝室へ向かった。
「みんな僕らが帰ってきたのを知ったらびっくりするぜ」
 ロンが声を潜めてハリーに囁いた。ネビルやシェーマスの驚いた顔を思い浮かべ、ハリーは
ニヤッと笑って七年生のプレートがかかった部屋のドアを勢いよく開けた。
 部屋は去年まで使っていたのとほとんど同じ造りだった。天蓋のかかった大きく心地よさそう
なベッドが五つ置かれている。
 しかし今はそのどのベッドも、空っぽだった。
「僕らが帰ってきたのをお祝いする、びっくりパーティーでもやってくれるつもりなのかな」
 力なく微笑んでハリーが振り返ると、ロンはあんぐりと口を開けていた。
「考えてみれば仕方ないことかもしれないな。普通の親がダンブルドアがいないホグワーツに、
子供を預けるのは危険だって思うのは」
「だけどどこにいたって危険なのは変わりないじゃないか」
 二つだけパジャマの置かれたベッドの内の一つに這い登り、セーターを脱ぎながらロンは不
服げに言った。
「ディーンやシェーマスはともかく、ネビルまで帰ってこないなんて意外だったなあ」
 ハリーはいつもネビルが使う位置に置かれたベッドを見やり、やるせない気持ちになった。
「女子寮の方もこんなだと思う?」
「だろうな。ハーマイオニー、六年生の寝室に行けばいいんだ。そうすりゃ少なくともジニーがい
る」
 大きく欠伸をして、ロンはさっさとベッドに潜り込んだ。
「マクゴナガルの言ってた通り、今は寝るが勝ちかもしれないな。おやすみ」
 ハリーもロンにおやすみを言って、天蓋をおろし、きちんとアイロンのかかったパジャマに着
替えた。このホグワーツのどこかに分霊箱があるかもしれないという可能性がゼロでない限
り、分霊箱を見つけだすまではとても眠くなんてなれないと思っていたのに、頭が枕につくかつ
かないかの内にハリーはもうすっかり、眠り込んでしまっていた。