「離れてろッ!このド変態!!!!!」

 一通りの愛情確認を、カボチャの声援の中終えたドラコは、ご機嫌急降下もいいところだっ
た。おまけにここは言うまでもなく、いつ誰が通りかかろうと文句を言えるはずもない、学校の
廊下だ。
 そんなところで結構なところまでされるがままにされてしまったドラコの怒りは、もっともでもあ
った。けれど、上気した肌を少しでも隠そうとしてか、はだけた胸元を掻き合わせる仕草は意
識していない分、余計に煽情的で。 

「このまま続きしたら、怒る?」

 ついつい本音を口にしては、繰り出される拳を避けるハメになってしまう。
「大体お前はハロウィンを勘違いしている!!このマグル育ち!!!」
 恥ずかしいのと、流されるのを止められなかった悔しさで、眦にじんわりと涙を溜めているドラ
コを見ると、さすがにちょっとやりすぎたかも、と思う。
「僕が悪かったから、機嫌直して」
 ぽん、と右手の上に紫とオレンジのリボンで飾った、カボチャパイを一切れ乗せてあげれば、
ドラコは複雑な顔をした。ハリーが朝からドビーのレクチャーの元作り上げたパイは、いかにも
お手製という代物だ。一番まともそうな部分を切り取ったものの、皮が狐色を通り越して焦げる
寸前だったり、詰めたカボチャははみ出していたり。
 でも、一目で分かるホームメイドものにドラコが案外弱いというのは、恋人としてとっくにリサ
ーチ済みのこと。
 さっきまで良いように悪戯を仕掛けてきたハリーから、お菓子なんてもらって喜びたくはない
だろうが、そうかといって突き返すだけの決心も付かないようだ。
「今更・・・・・・遅い・・・・・・」
 ボソボソ呟くのが聞こえたけれど、そこは聞こえないふりでドラコの首に手を回し、少しだけ甘
えてみた。

「僕の分は?」

 Trick or Treat?

 お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ、と、アイスブルーの瞳を覗き込んで囁いたら次の瞬間、
口に柔らかいものが押し当てられた。
 キス、ではない。ドラコは心なし赤くなってはいたが、顔の位置は口付けにしては遠い場所に
あった。
 じゃあなんだ、と眉を寄せたら「口を開けろ!」とドラコが言った。
 促されるまま開いた口の中に、その柔らかいものが侵入してきて、ハリーは一瞬、早まった
かも知れないと警戒した。
 ドラコは見た目は天使のように可愛いが、中身は―――良いところも悪いところもあるが、と
りあえずハリーをそこそこ痛めつけられる機会があれば、決して遠慮したりしないのは確かだ
からだ。
 しかし口の中のものは舌の上で、異常な味に変わるわけでも爆発するわけでも尖がるわけで
もなく・・・・・・ただ、甘く溶けた。
 そっと歯を立てると、一段と甘い・・・・・・・チョコレートの風味が広がる。
「チョコマシュマロ?」
 もぐもぐと口を動かして尋ねると、ドラコは黙ってオーガンジーでできた袋から、もう一つ、真っ
白なマシュマロを摘みあげ、頬張った。
「お前にぴったりだろう」

 言葉の意味を一瞬考え込んで、やがて答えに辿り着く。


「・・・・・・見た目は真っ白、中は真っ黒・・・・・・って―――?」


 あんまりといえばあんまりなあてつけに、強張った笑みを浮かべるハリーを無視して、ドラコ
はつん、とそっぽを向いてしまっている。
 パイ一つでは機嫌を直すわけにはいかなかったらしいドラコだが、シルクハットの上で揺れる
兎の耳は、彼が横を向くのにつられてふわりと揺れた。
 まるで、ハリーを誘ってるかのように。
 だから




「―――――っ!?」




 暴れまくる彼を押さえつけて、キスを盗んだ。

 互いに残る、チョコレートの味を与え合って。奪い合って。


 長く、深く。




 甘く。





「僕たち、やっぱりお似合いだと思うよ」


 ようやく唇を開放されたドラコが、息を整えている隙にそう言って、笑いかけたけれど。






 返事の代わりに返ってきたのは、鳩尾を見事に捕らえる足蹴りだった。










 Happy ☆ Happy ☆ Halloween









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